佐田グループには十組の仕組み宇宙があると言われている。その内の八つまでは確認できているが、残りの二つはまだ隠されていてわからない。
宇宙を先導しているその佐田グループの潰れている宇宙の一つに盟主コトシロヌシの宇宙がある。
総合先導役である佐田と共に地球に生まれ変わって仕組みの課題に取り組んでいる門馬貴洋、彼がその盟主であるが、彼の母親である門馬寛子会員、彼女がコトシロヌシの彼とセットの関係にあるワカヒルメ盟主婦神なのである。
その事実を隠すために寛子会員の本体のワカヒルメはヒツジヒメの身体で覆われていた。
そして親子の関係にしてまともなセットが組めないような封じ込めがほどこされていた。その母親である寛子会員の肉体がついに終末を迎えかかっている。
長い間の闘病生活であったように思われるのであるが、気丈に生き延びようとするその姿は、会員皆の驚異の的であった。
寝たきりになって話すこともできなくなった彼女は、人間としてまだ生きたいという望みを伝えてきていたが、二十年も前から異次元に招かれ続けていた女性でもあったのである。
ところが佐田グループの仕組み宇宙が解明され始めたここにきて、とうとう人間の生命に終末の時が訪れてきたのであった。
延命治療はしないことになっていた彼女から、その時が訪れてもさらに人間として生きたいという意思表示がなされたとき、周辺に狂いが巻き起こることになった。
しかし母親の意思を尊重しようとして約束を破ろうとした子供たちの行為が、約束違反になる事実を突きつけられて彼女の命は乱れた。そして佐田に身体を脱ぎ捨てる意思を伝えてきたのであった。
しかし、彼女が封じ込められている肉体から自由になるのは容易なことではなかった。仕組み潰しの設定がしてあったからである。
先導役の立場にある佐田の役目を行使することによって、本体ワカヒルメの彼女が腐り始めている肉体から抜け出したとき、彼女の命にはヒツジヒメがからみついていた。
そのヒツジヒメは大和の天皇家周辺にいた先祖で、仕組みを監視していた旧体制側の行政府の使者だった。
その怨霊のようなヒツジヒメを振り払って本体を現わした門馬寛子会員は、そのまま富士神界に招かれていったが、彼女の肉体はまだ死にきってはいなかった。
二度と腐った肉体に帰りたがらないワカヒルメ寛子を、佐田は盟主の宇宙公園に導いた。その星は潰れ形の仕組み宇宙で、佐田によって彫像公園にされていた星であった。
そこは旧体制領域のニ三才宇宙であって、こちらの五才レベルの世界からみると、濁った汚い世界でしかないので、その星を盟主婦神復活の生誕祭用に作り変え、開ける星の周辺にまで上げて、三日三晩の祝賀会を催したのであった。
肉体が完全に死ぬまでは富士山における四十九日の調整も出来ないので、それまでの間にやれることをやっておきましょうということになってのことであった。
先導役の特権でそうした祭り事をしたのであるが、珍しいということで、佐田グループの仲間たちや各地の関連の方々の来訪で、星は大にぎわいのワカヒルメ誕生祭となったのだった。
この巻頭言は「光泉堂だより」に毎月掲載しているものです。