仕組みの先導役である 佐田靖治は、廃墟の大掃除をするにあたって色々な手法を使うのであるが、その中の一つに恍惚死宴会を主催するというものがある。
それは名のごとく恍惚死する宴会なのであるが、それは色欲の究極に位置するすざましいものである。その参加者は 旧体制のトップからナンバースリーまでの実力者のみということになっている。
果てしもない 無限空間におびただしく存在している宇宙群、旧体制宇宙のその内の三分の一ほどあるが、廃墟からよみがってくる宇宙を加えると、全体の三分の二が旧体制宇宙ということになるとのことである。
恍惚死宴会に参加できるのは、その宇宙のトップからナンバースリーまでに限られているが、その数は膨大なものである。一宇宙五千億名としても 無限数に近い宇宙が構成されるほどおびただしい数となる。
それから換算してもこの宇宙がいかに果てしのないものであるかがわかろうというものである。
旧体制で前半を生き終えてしまって 廃墟と化している世界は、色地獄が基盤となったおぞましい機械妖怪宇宙であるが、後半の新体制宇宙は宇宙浄化 宇宙変革の仕組みのもとにそうした前半の世界を まともなものに作り替えながら生きている宇宙である。
変革のその過程は困難を極めるものとなっている。創造段階での作り間違いを正す 工程は複雑だし、遺伝子調整から廃液転換、機械やロボットをエネルギー転換して作り直す苦労だって並大抵のものではない。
マイナスかな プラスへ、開くから前へと 切り替えながらの宇宙運営は、頭で考えるほど容易なものではない。その強力な旧体制のトップクラスのメンバーに、楽なエネルギー転換をしてもらうための儀式が、恍惚死宴会というものなのである。
毎日 膨大な数の代表部がその儀式を経て エネルギー転換を図っている。それは五千とマイナス五千に分かれた夫婦が、猛毒の媚薬を飲んで結びつく という 際どいものであるが、一たび結びつくと一宇宙を生き終えてしまうほどの凄ましいものである。
そしてその工程は宇宙の始まりまで遡って行って、一気にエネルギー 還元してしまうまで終わらない。二分で一回の宇宙分を終えるとしても、1日ほどかかってしまうような恍惚死宴会を彼らは延々と続けていく。
それは悪の極み、色欲の極みではあるが、そうした彼らに対する妬みにはものすごいものがある。それは 旧体制宇宙のナンバー フォー以下のメンバーが中心なのだけれども、必ずしも 旧体制宇宙のメンバーのみではないところに興味深い問題がある。
正統派の実力者にもその恍惚死宴会に対する思考があるのである。佐田賞を受賞したメンバー達も、全員がその宴会に参加したのだそうである。
正統派の宇宙の五百名ほどの実力者がその宴会にチャレンジしたとのことであるが、一度も死ぬことができなかったというほどの厳しいものであるが、誰だって恍惚死するほどのセックスをしてみたい。新体制の正統派でもそのざまである。我々が生きているこの宇宙はそうした宇宙なのである。