九巡目の一
結婚話が出たのは五月三十一日(十七日目)のことであったが、そのことはナポレオンの四十九日とは関係のないことなので、その日は木星の続きということで、天王星へ出かけることになった。
ということであったが、アメリアが一緒に行きたいと駄々をこねるというひと悶着があった。
何が起こるかわからないので同行はさせられないということであったが、残されていたとしてもそれは変わらないし、同行したほうがナポレオン調整をするのに都合がいいということで、結局は婚前旅行ということになっていって、十時二十分の正式出発となったのだった。
天王星は調整星、幽冥界の科学者の基地はこちらにあって、木星のものは既に旧体制下のバーチャル領域となってしまっている。
そしてそちらからは地球と天王星をつないでおり、さらにはレベルの低い(旧体制的には高い)各衛星につながっているのだった。
天王星は地球の物質科学と直接につながっていたが、旧体制の宇宙科学の基地に圧倒されていて、仕組みの科学者の位置も満足に保てない状況になっているらしい。
天王星は幽冥界とされており、地球の科学者達が落ちている世界、木星や金星、火星も幽冥界とされているようではあるが、木星は旧体制の基地、金星は魔神界、火星は仏界としての位置付けということになるようであった。
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九巡目の二
総合先導役の佐田が毎日の朝方の公式行事を終え、休眠に入って二時間ほどたって起こされたとき、その日は午後一時のことであったが、ナポレオン組は天王星のバーチャル領域で眠らされていた。
いつものことであったが、こちらの対応がなくなると、うまくはめられて旧体制の妙なところに連れ込まれて、いつの間にか眠らされてしまう。
それでこちらに連絡が入るわけであるが、こちらとしてもいつものことなので、そこから調整浄化の作業が始まるのであった。
こちらの浄化活動が始まると、全体の仕組みにつながっていって、無限の廃墟の膨大なゴミ袋のヘドロがこちらに流し込まれてくる。
それを浄化し続けていくと、バーチャル界は満艦飾に染まって輝き始める。要するにふんだんのエネルギーが供給されるために、旧体制側がエネルギー酔いの状態になるのである。
そうした作業の一環としてナポレオン組の救出がなされるまでには、一時間半ほどかかったが、無事に終了して富士の拠点に帰り着いたのは三時二十五分頃のことであった。
帰還組はヘドロにまみれた身体を、今回は温泉で洗い流し、お土産は各自瞑想室でという流れで修められたのだった。
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九巡目の三
ナポレオンの中に巣くっている魔物に対処するには、セット女のアメリアとの調整が不可欠だった。
魔物がたけり狂ってナポレオンが皆の手に負えなくなるとき、アメリアに対応させると、中の魔物同士でのせめぎ合いが起こることになり、それが自分ではないことの自覚がお互いに出てくるらしく、その調整をすることで事が治まるからであった。
そういうことがしょっちゅう繰り返されていたが、そうした経験が重なるほど二人の関係は深まっていって、ますます結婚話に花が咲いていくのだった。
特に幸せな家庭生活など経験したことがなかったアメリアにそのことが激しくて、式に至るまでのいろいろとか、新居の問題とか、先の生活のこととか、家族や先祖、持参金とか式の費用など、普通の結婚式前同様のいろいろが話し合われるのだった。
ただ問題は、ナポレオンの親族がコルシカ島にあることはあっても、彼がフランスを拠点にした偉大な革命家であり、その失敗のツケが多いため、常に周辺からの怨訴に追われていて、どうしてもこちらが保護観察役をやらされることと、アメリアの背後のマフィアの調整をしなければならないことだった。
何せ彼らの遠祖はローマ帝国、法王庁にまでかかわりがあったからである。
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九巡目の四
六月一日は十八日目、この日は太陽の周辺に特別設定してある術界に向かうことになった。
宇宙の仕組みのために特別に設定されている各界各層は、以前にはなかったもので、あくまでも地球人類の仕組みが成功裏に進行していって構成されているものが多く、今までの宗教の教説などとはおよそかけ離れたものになっている。
そのためほとんどの領域で信用されない内容になっていると思われるが、仕組みを受け入れている者には必要不可欠な世界なので、その確かな情報を得たいのであるが、古いものを死守しようとしている旧体制側の妨害にはばまれ、その作業は困難を極める展開となっていく。
術界とは技術的な領域で目的を達成した者達が集う星で、新世界側には五つの星がある。
旧体制的には五十ほどのバーチャル領域があり、実態のある太陽系に寄生しているが、その実態は謎の中、正統派はそちらに入ることはできず、連れ込まれた時には食い潰されて悲惨な結末を迎えることになってしまう。
だからナポレオン組もこちらの対応が途切れないようにしようとするのであるが、こちらにはこちらの生活があるのでなかなか対応が難しくなってしまう。
それも止むを得ないこととして、事は運ばれていくのだった。最初の星はナポレオン好みの武術の星であったが、彼は着く早々武術の試合を申し込む始末であった。
九巡目の五
太陽系の宇宙は、神界コースの仕組みの段階で一度崩壊して消えたことになっているが、残光によって何事もなかったかのように見えている。
しかしその後様々な経過をたどって異次元的にはかなり不確実なものとなっている。
外からフラクタル(類似)宇宙が何度も何度も重なり続けているので、旧体制的な世界がそのまま温存されているようにも思われる。
一時宇宙が崩壊した段階で、太陽の周辺には次元の違う特殊な星が作られて、仕組みの調整をしていることになっていた。
それからずいぶん時がたち、現在ではその時とは違う設定になっていることが、今回の調査で判明しつつある。
太陽の周辺にある術界も、特設されたものではなく、消えたはずの物質宇宙に重ねられたものとして、復元再生されている可能性がある。
新世界側の五つとか、旧体制側のものが五十、そのほかには伏魔殿のものが五百ほどもあると言われているのであるが、それは太陽系周辺にあるとは言いながら、地球人類の仕組みを監視する性質のもので、全体的にはいいかげんな数字でしかないと思われる。
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九巡目の六
ナポレオンは五百名の地球のメンバーと共に術界の星の一つに上がったのであるが、大きく分けて五種類(武術、学術、芸術、技術、科学)ある領域の内の武術の星に真っ先に行ったのだった。
そしていろいろ流派がある中で、仕組みの戦士向きの道場へ行ったのであるが、レベルが低すぎて全部駄目の判定を下されて、怒り出した。
そして佐田がかけている矯正エネルギーを外せば対抗できる、そう豪語したのであった。
それならということで佐田が外そうとすると、オロチが五百匹ほど出てきたが、道場のみんなに払われてしまった。
それでナポレオンの中のオロチはヘドロ化してしまったが、それを自分で始末することがここでのトレーニングであると宣告されて、彼はやむなく瞑想室に入っていったのだった。
その間アメリアは、女の仕組みの戦士方に連れられてそちらの道場へ行き、いろいろと検査されたあとで、仕組みの戦士の初心者としての手ほどきを受けることになった。
そうしてナポレオンが出てくるのを待ったのであった。
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九巡目の七
三十分ほどで瞑想室から出てきたナポレオンが、すぐ剣術をしようとすると、幻体(まぼろしたい)の剣士が一名出てきて、こちらへどうぞと彼を招いた。
そちらはやめたほうがいいと仲間達がとめても行こうとするので、「そちらは駄目でしょう!」とアメリアが怒鳴った。
それでああそうかと思いとどまって、ナポレオンはしばらく考えている。そうしたことが二度ほどあり、そのあとで今度は霞体(かすみたい)の女が「こちらへどうぞ」と声をかけてくる。
見かねて仲間組の女の戦士がこちらへどうぞと自分達の道場へ彼を連れていった。
そして女の仕組みの戦士の初心者クラスの二名と手合わせをさせたが、ここらあたりでしょうと判定されたのは二段あたりでしかなかった。
怒ったナポレオンが次の相手を所望して立ち会った途端に、ピカリ、ドタンと引っくり返って終わりであった。
なぜだとナポレオンがたずねると、心得を教えてあるからだと。そして今のあなたはアメリアにも勝てない、そう宣告されてしまったのであった。
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