四巡目の一
恐くなくなったと言って瞑想室から出てきたナポレオンは、次は何をすればいいのかと勢いづいていたので、バンパイアに邪魔されないようにということで、最初に払った佐田の付けたし分を返しておいてもらいたい。
そう返答すると、彼はすぐに取り組み始めたが、やめろという声が聞こえてきたので、何をしたのかと確認してみた。
佐田が対応したバンパイアを光の剣で撃退したのだという。
勘違いもはなはだしいので、佐田が払った分のお金を返してほしいと言ったのであって、この段階でのバンパイア撃退は間違いだというと、そうかということで慌てて瞑想室へ駆け込んでいった。
バンパイアは怒っていたが、周囲のメンバーはそのひたむきな彼を、恐れながら笑って見守っているのだった。
前回よりも長い時間をかけて瞑想室から出てきた彼は、あんなにたくさんあるとは思わなかった、と申し訳なさそうにしているので、自分がしたことの公正な評価をしてもらわなくてはならない。
ということでその裁定をしてもらったところ、宇宙監獄に入らなくてはならないのだった。そして彼は月にある元宇宙の監獄に収監されたのだった。
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四巡目の二
刑期を終えるまでにそれほど時間はかからなかった。
二時間ほどで出てきたナポレオンに、過去のアーサー王宇宙で潰れて犯した罪のツケも、自分の分と佐田に対する分、返済をしておくようにという課題を出すと、涙ぐみながら取り組むのだった。
それが終わったときのナポレオンのミタマのレベルは、星の八合目まで昇っていた。
太陽へは自由に行けるレベルで、やっと純粋な若い頃の思いを超えたことになったわけであった。疲れた彼はピレネーに帰ると、六時間たっぷり眠るのだった。
そして五月二十二日、佐田の導師補佐で始められた四十九日は八日目に入っていた。
その日の朝の宇宙の公式行事では、ナポレオン饅頭が売り出されたが、バカ売れに売れ、皆がおいしいおいしいと大喜びで食べたのだった。
総合先導役の立場から見ると、彼は宇宙のロビンソンクルーソーのように思えるのだった。
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四巡目の三
ナポレオンにしては長い六時間の睡眠を終えて出てきた彼には、次の行程へ向かうためのミタマみがきの課題が出された。
かなり長い時間のあと瞑想室から出てきた彼には、新しい問題が生まれていた。ピレネーにはもはや彼に対応する能力がないので、拠点をエトナ山に移してほしいという提案が出されたのである。
エトナ山とは、今ではマフィアの拠点とも言われているシチリア島にある山のことである。
エトナ山は世界の光の柱五十のうちの一柱ではあっても、彼を扱えるほどの能力はないということで、彼の出身地がらみの土地ではあっても無理だと辞退するので皆は困り果て、こちらに相談がなされたのであった。
そのため彼好みの赤城山でトレーニングさせて様子を見ようということになった。
喜び勇んだナポレオンに対して、四十九日の拠点の資格のない赤城山は、とりあえず仕組みに対応できるような能力を身につけるための特別訓練をするということで、佐田の申し出を受け入れることになったのだった。
こちらの希望としてはまず、仕組みの第一段階の知識を習得するための読書会を開いてもらうことだった。
誰か読み手をつけて皆で読書するわけであるが、読み手として名乗りをあげたのは、昭和天皇の皇后の替え玉として働いたくの一水戸大神であった。
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四巡目の四
赤城山での読書会は、ナポレオンを中心にしたピレネーの導師とか仕組みの戦士三名、縮図日本からは仕組みの戦士組が五十名、外枠十名、合わせて六十名ほどで構成されるという特異なものだったが、お茶会形式で普通に行われた。
取り上げられたものは佐田の短編集から選ばれたもので、ナポレオンを啓発するためのものであった。
ナポレオンはひらがなを覚えたばかりだったので、漢字にルビ(ふりがな)をつけて全文が読めるように、特別のプリントが与えられていた。
字が読める、本が読めるということを自覚したナポレオンの感激は大きくて、彼の中で何かが覚醒した。
ミタマは輝き渡り、そのエネルギーは開ける星を経由して、基本宇宙を超え、最上界にまで昇らんばかりであった。
そのため急遽読書会は開ける星に移され、かって佐田の元に集まっていた子神達を中心に、懇談会が催されたのだった。
そして三十分ほどで赤城山に戻ってはきたものの、もはや読書会は成り立たなくなり、改めてやり直すということで、そのまま解散ということになっていったのだった。
四巡目の五
ふりがな付きの『子神たち』(佐田の著書)を手渡されたナポレオンは、赤城山の寝室で一人になると、それを読み始めるのだった。
そして朝まで読み続けていたが、三分の二ほど読んだところで、赤城山の朝の鍛錬の時間がきてしまったのだった。赤城山の上のほうに小さな滝があり、そこで彼らは毎日禊をしているのだという。
そこは体制側の佐郷屋組とも共同の滝場であるため、交代で使われることになっているとのことであったが、その日はナポレオンが入るということで、大勢の役人たちがやってきていた。
彼らだけが使う小さな滝であるために、一名ずつ交代で入るしかないその滝に、ナポレオンが入る順番がきた。
初めての滝で何が起きるかわからないので、佐田に対応してほしいという依頼があったので、自宅からの瞑想調整をして彼を滝に入れたのだった。
その滝行で彼のミタマは構造界の七合目まで上がっていった。潜在的な何かがなければ考えられないレベルであった。
そのあとピレネーに帰ったナポレオンは、図書室で『子神たち』の残りを一気に読み終えて、眠りに入ったのだった。
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四巡目の六
文盲のナポレオンに読み書きを教えるための特別調整が行われていた五月二十一日のこと、彼に対する膨大な監視網が敷かれている宇宙のバンパイア界で、佐田の著書が超豪華本として売り出されることになった。
佐田の著書は持ち運びも楽で、読みやすい廉価なものであるが、上流階級から引き抜かれていく者の多いバンパイア界では、そうしたみすぼらしいものは好まれない。
そのため飾りものとしての値打ちもある超豪華で高価なものが、佐田の許可を得て作り出された。
その豪華本はバンパイアを通して伏魔殿宇宙へ売り出されたが、バカ売れに売れたばかりではなく、超豪華なお茶会とともに、あちこちで読書会が催されてもいったのだった。
そしてただ読むばかりではなく、誰が最も早くその中の封印を剥がして読みきるかの競技会が催され、優勝者にはスーパームツゴロウ賞(旧体制側の佐田賞)が授与されることになったのだった。
彼らは上流階級に所属しているのと同時に、ナポレオンのように潰された仕組みメンバーである者が多く、そこからどう脱却できるかが問われてもいたからである。
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四巡目の七
五月二十二日の午後六時前、ナポレオンは再び赤城山へ出かけていった。残りの読書会の約束を果たすためと、剣術のトレーニングと滝行をするためであった。
これも四十九日行の一環として成り立つということなので、納得がいくまでやってもらうことになった。
読書会は夜なので、その前に剣術の鍛錬をしたのであるが、男達とやったあとで、現地ではしてはいけない女との手合いを望んで乱舞するので、迷惑だと言いながらも女達はうれしそうに報告してくるのだった。
そうして汗を流してからの滝の禊、そして食事のあと各地から来ている仕組みの戦士達との懇談を経て、夜の八時からの読書会へと進んでいった。
ところがこちらが寝かされて次の仕組みの設定へと進行していったため、思いがけない展開になっていったのだった。
読書会が終わる頃になって起こされたとき、予定にはない処刑場の特別浄化を赤城神社で行うことになっていった。
その浄化は一時間ほど続いたが、赤城山から宇宙全体へと発展していくほどの規模の大きなものだった。
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