三巡目の一
四十九日行に出かけないときのピレネーで、ナポレオンは剣ばかりをいじくり回している。
仕組みの剣はレベルを落としても重くて扱えないので、それなら仕組みの会の「光の剣(つるぎ)」を使うといいと勧めてみた。
それに持ち替えてためすと、不思議とちょうどいい感じだということで、その剣を自分のものにしたがった。
しかし光の剣は仕組みの会に常備されているもので、必要な会員にはいつでも貸し出されることになっている、そう解説して、「求道の心得」を読むように勧めておいた。
佐田のその著書は導師が最初に渡しておいたということで、その内容の確認をすると、ナポレオンはすぐ瞑想室に入って、そのトレーニングをするのだった。
この時点で彼のミタマのレベルは地球神界の八合目まで戻っていた。ちなみに彼の若い頃のミタマは、星レベルの五合目まで昇っていたとのことであった。
そして開いていた。人類のミタマが五名開いていれば人類は滅亡しない、そう言われていた頃のことである。
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三巡目の二
準備ができたナポレオンは、導師と共に太陽神界へと出かけていった。そしてそこでも剣術のトレーニングばかりをしていたとのこと。
三時間ほど滞在して戻ってきた彼は、光の剣と仕組みの剣の違いを確認してくるのだった。そして仕組みの剣はまだ早いということで、赤城山に返されることになった。
光の剣に関しては必要に応じて貸し与えられるので、所有はできないことの説明をすると、専用のサーベルが捨てられないのだった。
サーベルがないと心もとなくて、恐ろしくてたまらないとのことで、いつまでたっても英雄から降りられないのだった。
それは巣くっている鬼のせいだと教えると、びっくりして瞑想室へ入って確認するのだった。そしていることが確認できたらしく、すぐ出てきてそれが何なのか問いかけてきた。
思いあがりに巣くう魔物だと教えると、そばで監視しているらしいバラの女王のそのとおりだとの声が聞こえた。
バンパイアの包囲網は、さらに厳しくなって宇宙中からやってきていた。それは仕組みの総合先導役の指導を受けているからで、彼単独ではとても排除できる勢力ではない。
この時点で彼のバンパイア度は、まだ三分の一も残っていた。
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三巡目の三
五時間ほどの睡眠を終えての五月十九日、その日の四十九日行は海王星の魔神界、ここでは剣術のトレーニングはなかったらしく、短時間で帰ってきて、すぐ金星の魔神界へ。
しかし表の魔神にはあまり関心がなかったらしい。それならということで、月から入る本物の魔神界へと進んでもらうことになった。
そちらは仏界と同じ裏の海王星と金星で、そちらでは剣術のトレーニングができるらしかった。
しかし光の剣を手にしてしまっては、もう楽しい剣術にはなりようもなく、さほど時間をかけることもなくピレネーに帰還ということになるのだった。
次の日二十日の日曜日は仕組みの会の月例会だったので、あまりまともに対応できなかったのであるが、皇居の隣りにある北の丸公園の科学技術館までの行き返りの車の中では、求道や仕組みに関する多少の問答はできた。
しかし読書に関しては頑として受け入れようとはしなかった。そこには何か別の要素が隠されているのではないか、そう考えるしかない展開であった。
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三巡目の四
ナポレオンが文字や文章をそこまで拒絶することの背景には、何か特別の理由があるのではないか? その自問自答に対して出てきたのは、ヘラクレスのことであった。
ナポレオンが求めていたのはソクラテスではなくてヘラクレスではないのだろうか? そして原始的なヘラクレスの仕組みの段階は、宇宙が正しい体制に入り込んでいく過程なのではないのだろうか?
五台レベルのヘラクレスの星に確認をとってみると、やはり自然だけの正しい世界なのだという。
やはりそうなのか、最後には文字まで消えてしまう純粋自然の中へと突き進まなくてはならない、その段階にいるのがナポレオンなのではないのだろうか?
そうした思いがわいたので、そちら方向から彼の過去の宇宙の痕跡を探ってみると、何かがあるような気がする。
もしかして彼はヘラクレスのような正しい世界へと宇宙を率いる先導役だったのではあるまいか?
六台アーサー王の五千億の宇宙の中の一つに、代表として立ったことがあるのではないのだろうか?
三巡目の五
月例会から自宅に帰り、食事をして酒の入った数時間の眠りのあと、夜中に起こされてナポレオンと対応することになった。
こちらが車の中で確認したことの内容を知りたいとのことだったので、まだ確かなことではないが、ナポレオンは六台のヘラクレスではないのか、そういう思いを語ったのであるが、そこで矛盾に気がついた。
彼は太陽系の元宇宙に所属していることを忘れていたのである。しかしそれに関しては、元宇宙だってアーサー王宇宙の五千億の一つだろうとのこと。
そのことを指摘したのは徳川吉宗大神、つまりはアーサー王宇宙のスサノヲだったのである。
なるほど、それでいいのか。となるとナポレオンは元宇宙の今までの過去のどこかで代表として立っていることになる。
そして潰されている。取り付いている鬼はその後腐れではないのか?
ナポレオンはいつだってそうだという声も聞こえてくる。そうしたことを話すと、彼は涙ぐむのだという。
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三巡目の六
過去のことで涙ぐむのは、胸にくるものがあるからだという。
やはり何かがあるのだろうと思われたので、その線でもう少し突っ込んでみることにしたのであるが、それにしても展開が激し過ぎる。
そのことはともかく、彼が剣の使い方の確認をしつこくしてくるので、今のあなたには佐田が書いた小説の中の身障者の女の子にも勝てないと言うと、どんな女だと聞いてくる。
短編集「色地獄ヘドロの調整」の中の二編目の「ボクサーの卵と女」だと言うと、知らないとのことなので、急遽その仕組みシリーズ副読本が取り寄せられて手渡された。
佐田の著書は優しいから読んでおくように、仕組みを知らないと光の剣は使えないからと言うと、読んでみると言って図書室へ入っていった。
図書室で担当の女性に読んでもらって出てきたナポレオンは、あんな女に負けるわけがないと言う。
それなら素手の私にかかってきなさい、ということで対決することになった。
闘志むき出しのナポレオンは、まず最初に愛剣のサーベルで私に切りかかってきた。私の姿が見えるような設定になるらしい。
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三巡目の七
あっと言う間にサーベルは折れていた。すぐさまナポレオンは光の剣を振りかざす。ところがただ突っ立っているだけの佐田に、打ち込むことができない。
三度打ち込もうとした時に、ピカッと佐田のミタマが光った。それで終わりであった。ナポレオンは黒焦げになって死んでいた。
彼の思いの中に真の殺意が入っていたからである。
ナポレオンの愛剣であるサーベルは作り直されることになったが、光の剣に関してはとてもとても使える段階ではないのだった。
導師方によるよみがえりの調整がなされたあと、彼との問答がなされたが、彼はとにかく恐くてたまらないという。
だからサーベルを手放すことができないのだという。
光の剣がほしいという彼に、光の剣は仕組みの会のものであって、個人的に所有することはできないが、真に必要な時には現れることになっている。
そう言うと納得はしたようであるが、心細くて不安なようであった。
恐怖を武器を使わずに払い除ける方法があるので、そのトレーニングをするようにと導師方にお願いしたところ、すぐその指導がなされ、ナポレオンは瞑想室に入っていった。