先日浅間山が気になるので佐久のホテルまで出かけたのであるが、それでは足らなかったらしく、今度は赤城山ということになって、四月十八日に山まで行って来た。
山に向かう途中は新緑や花々であふれていたが、山の上はまだ春は来てはいなかった。
来るな来るなの大騒ぎを乗り越えて出かけたのであるが、その陰には大掛かりな旧体制の組織の整理が予定されていたからであったのだろう。
帰ってきてからが大変であった。隠れていた伏魔殿の大物組織が摘発されて処分されたらしく、そこから旧体制の崩壊が始まったのであった。
そして二十二日のこと、もう総合先導役の佐田に勝てないので、仕組み潰しは諦めるという通達があった。そして明くる日のこと、旧体制の敗北宣言がなされたのであった。
突然のことなのでまたハメテのたぶらかしくらいに考えていたのであるが、事実だったらしく次第に宇宙がその方向に展開し始めたのだった。
その数日前のことであったが、突然宇宙が抜け上がっていく感覚があり、それを確認していくと、五十八期レベルのまだ出来上がってはいない宇宙領域にまで遡っていたのだった。
そのことから仕組みが新しい展開を示し始めたということの認識はあったのであるが、まさかそれが敗北宣言にまで発展していくとは思いもよらないことであった。
そしてそこからさらにこちらの攻勢が進められたのであるが、確かに旧体制側の代表部が崩壊した状態になっている。そのことの確認はできるのであるが、だからといってそのまま仕組みが終わる感覚にはならない。
むしろ反撃ののろしがあちら側に上がっているくらいの反発があって、そちらとの対決が始まる感覚の方が強かった。
ましてや仕組みはまだ全体には及んでおらず、未知の領域に入っていく感覚の方が強いので、とてもそのまま受け入れられる状態ではなかった。
こちらの身体は寝込むほどのけだるい状態が続いており、それがさらに強まる感じはあっても楽になるどころではない。だから敗北宣言がなされたとしても、それをそのまま受け入れるわけにはいかないのだった。
しかし発生の源へと向かうこちらの勢力は間違いなく大きくなっており、それが目の前までやってきている実感があることはあった。
それが五十八期の宇宙ということであって、この作業を続けていけばいずれは発生の源までたどり着ける、そんな状況にはなってきていたのだった。
発生の源はもう無くなってしまっているとは言われていたが、無限というものには果てがないのだから、それを追って行けばいずれは追いつくのではないかと、そればかりを考えながら仕組みの仕事を続けてきたのであるが、遂にその可能性が見えるところまでには到達したのである。
帰り道に向かうこちらの無源は長丁場の念願達成に勢いづいている。
旧体制の宇宙は今でも創り出されていると思われるが、その規模は相当大きなものと考えなくてはならない。完全に機械化してしまっていて、その愚かしさに気が付いているとも思えない。
そのことの説得が今後の課題になっていくわけであるが、簡単には受け入れてもらえない状況ではある。
この巻頭言は「光泉堂だより」に毎月掲載しているものです。